「トイレの立ち上がりが大変に感じる」
筋力が落ちたり、足の手術をしたり…。
足に力が入りにくくなると、低いところからの立ち上がりが大変になります。
『手すりを付ける』という方法がまっさきに思いつくかもしれません。
今回はもうひとつのアイデアとして【補高便座】をご紹介します。
補高便座とは、トイレに座った時に座面の高さを補うための福祉用具です。
便座の座面を高くするという方法です。
介助する場合も、介助者が楽になります。
今回は作業療法士の目線で、補高便座のメリットと選び方をご紹介したいと思います。
補高便座とは?
今回のご紹介は補高便座。
トイレに座った時に座面の高さを補うための福祉用具です。
筋力が低下して立ち上がりが大変になってきた人や、膝や股関節の調子が良くないという方が使用することが多いです。
補高便座のメリット
立ち上がりが楽になる
ひとつめのメリットは、『立ち上がりが楽になる』です。
足の力が低下したり、力が入りにくくなると、低い位置から立ち上がるのは大変になります。高さを補うだけことで、立ち上がりが楽になります。
関節の負担軽減
ふたつめのメリットは、『関節の負担が減る』です。
深くかがむことで関節に負担がくる場合があります。屈めばかがむほど、力が入りにくいこともあります。
座面の高さを補うことで、膝や股関節など関節の負担も軽減されます。
介助の負担が減る
ご本人が楽になるだけでなく、介助する側も楽になります。
補高便座の種類
補高便座にもいくつか種類があるのでご紹介します。
種類は3つ
1. 便座の上に置くタイプ
ひとつは便座の上に置くタイプ。いちばん安くて、簡単に設置できます。
家族がいる場合は、すぐに外すこともできます。取り外しが簡単。
掃除がしやすいというメリットもあります。
便器のフタは閉められなくなりますが、フタがあるタイプのものも選べます。
○取り外しがすぐにできる
○設置工事が不要なので手軽
○安い
○掃除がしやすい
○便座の穴に合わない場合は座った時に多少ズレることもある
○暖房便座が効かない
○センサーが効かなかったり、誤作動したり、ウォシュレットが使用しにくいことがある
2. 便座と便器の間に設置するタイプ
便座と便器の間に挟んで設置するタイプ。
便器に固定されるのでズレる心配がありません。
普通の便座を上に乗せて固定するので、ウォシュレットや暖房便座の機能も使用できます。
○今の便器のままで、後付けすることができる
○固定されてずれにくい
○ウォシュレットや暖房便座の機能が使用できる
○フタが閉まる
○今の便器に規格が合わないこともある
○設置が専門的で面倒
○掃除がすみずみまでしにくい
○同居する家族が使用する時に、不必要でもとりはずせない
立ち上がりの時は高くして、立ち上がりを補助します。高くすると便座自体が前傾する機能もあるため、立ち座りが容易になります。
○立ち座りが楽で、関節の負担が少なくなる。
○介助車も楽になり、身体の負担、転倒の危険も少なくなる。
○設置のコストが大きい。
○停電のときに機能が使えない
補高便座の選び方
身体の状態や生活環境に合わせて、補高便座の選び方を参考までにご紹介。
1. 便座の上に置くタイプ
「足の筋肉が落ちて立ち上がりが少し大変になってきたな、、」という状態なら、便座の上に置くタイプがまずは使用しやすい。
便座はウレタン素材でやわらかく、長時間便座に座るのが辛い、また固い座面があたると足が痛いという場合にもおすすめです。
取り外しができるので、家族と同居している場合は何かと便利。
安くて簡単なので、試してみたい人も導入しやすいです。
○長時間座るのがつらい、座面が硬くて痛い方
○同居家族がいて取り外しをしたい方
2. 便座と便座の間に設置するタイプ
取り外しがないぶん、固定されているのでズレがありません。安心です。
一人暮らしや高齢の夫婦で生活されていて、取り外しをしなくてもよい場合は特に選択肢になるかと思います。
暖房便座、ウォシュレットの機能がそのまま使えるし、フタを開け閉めすることもできるので普通のトイレと変わらず使用できます。
○ウォシュレットや暖房便座を安心して利用したい方
○取り外しをしなくてもいいご家庭
3. 昇降機能付きのタイプ
昇降機能付きのタイプは、立ち上がりが大変な方が使用するのに適しています。介護度の重い方、今後重くなりそうな方にも向いています。
手すりが一緒に昇降するので、体幹が不安定な方も楽になるはずです。
便座自体が前傾しながら前に出てくるので、立ち上がりは3つのタイプの中で一番楽になります。
股関節や膝の手術の既往があってどうしても深く屈めない方も使用しやすいです。
高さを自由に調整できます。
また、家で介護するという場合にはとても便利。使用する本人だけでなく、介助者も楽で身体の負担が少なくなるメリットがあります。
反面、操作が必要なので認知症の方が自身で使うには、使いにくいかもしれません。
電気が止まったときにも機能は使用できません。
○立ち上がりがより大変な方
○膝や股関節の手術で可動域に制限があるなど、、
ケースバイケースでご検討ください。
保険は適用されるのか?
補高便座は介護保険が適用されます。
ただし、衛星用品なので、レンタルはできません。購入一択になります。
どれかひとつを選択すると、後から「やっぱりこれも!」ということはできなくて、壊れない限りは再度保険で購入するということはできません。
自己負担は原則1割で、便座の上に置くタイプは1000円〜2000円程度。
自動昇降付きでは10万円以上と、金額にけっこう差があります。
介護認定を受けている方は、ケアマネージャーさんや自治体に相談してみてください。
購入するには
要介護認定を受けていれば、介護保険が適用されて1割負担で購入することができます。
ただ、介護保険には上限額が決まっています。
いろいろなものを購入予定の方は限度額がオーバーしてしまうかもしれません。
限度額がオーバーしてしまうという方はネットで購入もおすすめです。
便座の上に置くタイプであれば、Amazonや楽天で1万円前後購入可能です。
ネットや店頭での購入は、『介護保険外の方』『高さを試してみたい』という方にもおすすめです。