自宅で自走する方に「低床の車椅子」をレンタルするという選択
在宅生活で車椅子を使用する方の中には、
「自宅内はできるだけ自分で動きたい」
「楽に長く座っていたい」
と考えている方も多いと思います。
そのようなケースで、選択肢のひとつとして検討したいのが
低床(ていしょう)タイプの車椅子です。
低床車椅子は、背の低い方向けというだけではありません。
自宅内で車椅子を使用している方の選択肢です。
この記事では、
低床の車椅子を「レンタルで試す」ことのメリットと注意点を整理します。
実際に使っている方を見てきた視点も交えながらまとめました。
ケアマネの方が利用者・家族と検討する際の参考になれば幸いです。
低床の車椅子とは
低床の車椅子は、一般的な車椅子よりも
座面の位置が低く設定されています。
一般的な車椅子は、フットレスト(足台)を装着した状態で
足がちょうど乗る高さを基準に選定されます。
一方、低床の車椅子は、
フットレストを外し、床に足をつけて自走することを前提に
座面高を設定できる点が特徴です。
自宅でフットレストを外している人は、ぜひ検討して見てほしいです。
片足だけ外している人にも適応される例は多いです。
低床な分、床に足が届きやすく、
「自走しやすい」
「床に足をつけて座っていられる」
「お尻に敷くクッションの自由度が高い」など、
選択肢の幅が生まれます。
メリット① クッション選択の幅が広がる
低床タイプでは、クッションに厚みを持たせても座面が高くなりにくいという特徴があります。
厚めのクッションは、長く座るには快適なものが多くラインナップされています。
座っていておしりが痛い方にも向きます。
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体圧分散を重視したい
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前ずれ対策のクッションを使いたい
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姿勢保持を優先したい
といった場合でも、クッション選びを妥協せずに済むことが多く、
結果として長時間座位の安定につながります。
低床車椅子は、高さの調整が3段階くらいできるものもあって、
クッションと座面の高さ合わせて調整すると、
バリエーションの幅が一気に広がります。
ぼくも調整の際は自分でも座らせてもらいますが、
クッションによって座り心地がぜんぜん違うので、ぜひやってみてほしいです。
レンタルは車椅子とクッションを両方試せるメリットがあります。
メリット② 脚を使った移動がしやすい
フットレストを外し、床に脚をつけた状態で移動できるのも低床ならではの利点です。
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- 移動
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方向転換
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細かな位置調整
を、腕だけでなく脚も使って行えるため、
上肢の負担軽減や動作のスムーズさにつながります。
自宅内では「完全な手こぎ」よりも、
腕と脚を併用した移動のほうが現実的で楽というケースは少なくありません。
身体的には、全身の運動になるので、とても良い練習になります。
メリット③ 座る姿勢が良くなる + 前ずれを自分で直しやすい
低床の車椅子は、足を床について座るセッティングができるので、座る姿勢が安定します。
足の重さを床がしっかり支えてくれる安心感があり、腰の負担も減ります。
良い姿勢で動けるので、動作するときの身体負担も少なくなるので、リハビリとしてもすごくメリットに感じています。
さらに、「前ずれが起きにくい」ことに加えて、
「前ずれを自分で直しやすい」ことが大きな特徴だと感じています。
低床で床に脚がつくことで、
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プッシュアップでお尻を後ろにずらしやすい
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姿勢を戻す動作が行いやすい
座り直して良い姿勢に直せると、結果として、
座位を保てる時間が長くなることが多くなります。
これは単なる「快適さ」だけでなく、
姿勢崩れや褥瘡リスクを考えるうえでも重要なポイントです。
介助する方も、介助量が少なくなり得ます。
注意点①:立ち上がりにはパワーが必要になることも
一方で、低床の車椅子には注意して確認したい点もあります。
座面が低いため、
立ち上がり動作では高い車椅子よりも初期動作にパワーが必要になる場合があります。
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立ち上がりを頻繁に行う方
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下肢筋力が低下している方
では、動作負担が増えないかを事前に確認することが大切です。
この点は、
生活動線・立ち上がり頻度・介助の有無を含めて、ケアマネ・家族と共有したいポイントです。
注意点②:肩の痛み
めったにありませんが、ぼくは肩の痛みが出ないかを確認します。
座面が低くなると、手すりが相対的に高くなる可能性があって、
それが肩に負担に感じないかを毎回聞くようにしています。
こんなケースでは「低床の車椅子が向いている」
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自宅内を自走で移動したい方
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床に足が届き、脚を使った移動が可能な方
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長時間座位で過ごしたい方
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臀部の前ずれが起きやすい方
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使用するクッション選択を重視したい方(褥瘡になりやすい方、おしりが痛い方)
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姿勢を自分で整えたいという意欲がある方
低床の車椅子は、
「動ける部分を活かしながら、座っていられる時間を延ばしたい」
というニーズと相性がよいと感じます。
こんなケースでは「慎重に検討」
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立ち上がり動作が多く、下肢筋力がかなり低下している場合
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立位・移乗に介助量が多い場合(移乗が不安定な場合)
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高さのある座面でないと立ち上がれない場合
低床の車椅子は、座面が低い分、
立ち上がりの初期動作にパワーを要することがあります。
生活動線や立ち上がり頻度も含めて、実際の生活場面で検討することが重要です。
なぜ「レンタル」で試すのが現実的か
低床の車椅子に限りませんが、
「合えば生活が大きく楽になる一方、合わなければ負担になる」
という可能性もあります。
低床の車椅子は、
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身体状況
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住宅環境
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生活スタイル
によって向き・不向きがありますし、低床の車椅子の種類によっても使いやすさは変わってきます。
現場では、一発でピタッと『セッティングが完璧につくる』は難しいです。
その時良かったとしても、後から気づくこともあります。
「トイレまで行けなかった」
「長く座っているとおしりが痛くなってきた」
「肘かけがぶつかるように感じる」
そのため、まずはレンタルで試すという選択が合理的なはずです。(業者さんには手間をかけてしまいますが、相談してみてください)
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合わなければ変更できる
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状態変化に合わせて見直せる
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導入での失敗リスクが低い
在宅生活の中で実際に使いながら判断できます。
ケアマネ・家族が検討する際の視点
低床の車椅子は、
「特別な人向け」ではなく、在宅で自走する方の選択肢のひとつです。
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長時間座っていられるか
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姿勢を自分で整えられるか
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移動が楽になるか
こうした視点で、利用者本人の感覚も含めて検討することが重要だと思います。
生活の中で見ていくことが必要なため、レンタルが合っていると思います。
レンタル時に確認したい3つのポイント
最後に、見ておきたい確認ポイントを挙げてみます。
① 生活導線の移動が無理なく行えるか(自宅との相性もあります)
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廊下・ドア幅・段差
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床に足をつけて移動できるか(絨毯かフローリングか)
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切り返しや方向転換がスムーズか
低床の車椅子は、
「自宅内でどう動くか」によって、使いやすいかどうかは大きく変わります。
カタログ上のサイズより、実際の生活導線で試すことが重要です。
② 長時間座ったときの姿勢の崩れ・臀部の痛み
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前ずれが起きたときに自分で修正できるか
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床に足をつけて安定して座り続けられるか
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クッションとの相性はどうか
低床のメリットは、
「座りやすい」だけでなく
「座り直せる・戻れる」ことにもあります。
短時間では問題がなくても、
30分〜1時間座った後の感想は、
座った直後とは違ってくることがあります。
時間をかけて確認したいポイントです
③ 移乗動作の安定性・行いやすさ
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ベッド・トイレ・椅子への移乗が安定しているか
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立ち上がり時に初動がきつすぎないか
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介助者が入る場合、介助しやすいか
低床の車椅子は、
立ち上がり、移乗動作を確認してほしいです。
ややパワーが必要になる場合があります。
特にベッドへの移乗動作や手すりを使って立ち上がる際に、大変に感じるかもしれません。
移乗回数が多い生活では、「安全に行えるか」「楽に行えるか」「身体に負担がきすぎないか」丁寧な確認が必要です。
補足:食事をするテーブルとの高さの関係
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テーブルが高く感じすぎないか
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肘や肩が無理な位置にならないか
在宅生活では、
「食事が楽にできるか」=「食事を楽しめるか」「嚥下しやすいか」に直結します。
可能であれば、食事環境も含めて確認すると安心です。